蜂のアトリエ~養蜂日誌~

おいしい百花蜜はいかがですか?季節の味と香りを楽しんでください。

最強の跡取り娘、タワマンを継ぐ

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先日、お世話係の私をうっかり始末しそうになった群…私は彼女達を最強女王群と呼んでいます。5月末に採蜜をした現在販売中のはちみつを、加工された方々です。セイヨウミツバチですが、日本ミツバチ飼育用の重箱6段タワーマンションで越冬して、4月には3回分蜂。跡を取ったのはおそらく三女。この子が最強なんです!

六段タワーマンション

セイヨウミツバチは来たる分蜂に備えて、新しい女王バチを産み育てます。その数約15匹。だけど、ひとつの群(巣箱)には1匹の女王バチしか君臨できません。その鉄則に基づいて、母女王は孵化する娘女王達のために古巣を譲り、お供を伴い最初の分蜂。続いて長女は妹のために、次女は次の妹のために…と続きます。しかし分蜂は、各女王バチに伴って多くの働きバチが出て行ってしまいます。また、分蜂という冒険のために、食料のはちみつもたくさんお腹に入れて出ていきます。すると残された巣には、働きバチも貯蔵されたはちみつも少なくなってしまうのです。「これ以上は困る!」と判断されると、以降に誕生する女王バチは一匹を残して淘汰されてしまいます。

三女最強の予感がしたのは、2度目の分蜂(長女)の時です。私は自宅前の五葉松に分蜂球を作ったこの群を回収し、新しい巣箱に招き入れました。飼育群数が増えた!と喜んだのもつかの間、その巣箱の巣門には女王バチの死体が…Σ(・∀・|||)ゲッ!! 蜂球の回収はまだ不慣れなので、知らない間に傷つけてしまったのだろうか?女王のいない群には滅亡しかありません。でもいない割には逃げないし、花粉運び始めちゃってる?翌日見てみると、またも女王バチの死体が…。翌々日も女王バチの死体×2…。この状況から見えてくる説は、複数の女王を伴って分蜂したということです。そんなの本でも読んだことないし、聞いたこともないけど。まあ、いろんなパターンがあるんだろうなあ。

追い出された妹女王

さて、このエピソードがなぜ「三女最強」に結びつくかというと、おそらく姉女王達は新しく生まれたこの三女に一度に追い立てられたのでは?という想像ができるからです。この長女分蜂の後、するっと次女の分蜂。(ここまでの登場女王バチは三女含めて7匹なので、本当は誰が長女なのか次女なのか三女なのか不明ですが、便宜上殺された女王バチはカウントしないことにしましょう。)そして、彼女は後から生まれてきた妹女王も次々に6匹ほど始末しました。もう、働きバチもはちみつも分けてやる余裕はありませんから、分蜂させずに殺します。この期間、私は初めて女王バチの鳴き声を聞きました。それは、「私がこの群の女王なのよ!」という働きバチ達への宣言であり、妹たちへの威嚇でもあります。この気の強さなら姉女王達も逃げ出すだろうなあ。こう書くと恐ろしい子のようですが、働きバチに選ばれた女王の中の女王という言い方もできますね。三女を支持して実際に手を下したのは、働きバチ達かもしれませんし。

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この三女の群は、飼育している数群の中でもトップの強勢群です。女王バチの気質は群全体の気質に影響します。働きバチは、巣門から弾丸のようにまっすぐ飛び出していく元気さがあり、貯蜜量の回復も産卵育児も旺盛、お裾分けいただいた蜜もとってもおいしく仕上げてくれました。こんな群のハチミツ食べてみたくありませんか?三女の女王フェロモンで元気になれるかもしれません。